はじめに:自由な個人輸入に潜む「見えない危険」
インターネット通販や個人輸入代行を通じて、誰でも簡単に海外の医薬品を購入できる時代になりました。しかし、その便利さとは裏腹に、日本の厚生労働省(以下「厚労省」)は繰り返し“個人輸入の危険性”に対して警鐘を鳴らしています。
本記事では、厚労省がなぜ個人輸入に慎重な姿勢を示すのか、公式見解をもとに根拠と背景を詳しく解説します。
厚労省の立場:「個人輸入=自己責任」では済まない理由
▸ 医薬品の安全性が確保されていない
厚労省の見解では、海外から輸入される医薬品は、日本国内の製造・販売基準や品質管理の対象外であり、安全性や有効性が確認されていないケースが大半です。
厚労省公式サイトより抜粋:
「個人輸入により購入した医薬品等については、その品質・有効性・安全性について、国として確認しているものではありません。」
個人輸入に関する厚労省の主な注意喚起内容
厚労省は、以下のような点について強い警戒を呼びかけています。
❖ 偽物・粗悪品の可能性
- 成分表示と中身が異なる薬品
- 有効成分が全く入っていない、または過剰に含まれているケース
- 発がん性物質や重金属を含む不良品も確認済み
❖ 健康被害のリスク
- 重篤な副作用(例:肝障害、心疾患、ホルモン異常)
- アナフィラキシーショックなど命に関わるケースも報告済み
❖ 責任の所在が不明
- 輸入した医薬品による健康被害は**「自己責任」**
- 医療機関も対応が難しくなるケースが多い
具体的な警告事例と公開資料
厚労省は過去に多数の注意喚起を発表しています。以下はその代表的なものです。
「いわゆる健康食品」に関する注意喚起(例:2021年)
- 個人輸入のダイエットサプリに禁止成分「シブトラミン」が含まれ、健康被害が報告された
「偽造医薬品」に関する警告
- AGA治療薬「プロペシア」「ミノキシジル」などで、偽造品の流通が確認されている
- 成分分析の結果、成分不足や異物混入が判明
個人輸入代行業者に関する警告
- 販売サイトが日本語で正規品を装っているが、海外製の粗悪品を送付している事例
- 薬機法(旧薬事法)違反に該当する可能性あり
厚労省が推奨する安全な医薬品の選び方
厚労省は、医薬品の使用に関して以下のような基本的な方針を示しています。
安全な医薬品の選び方 | 説明 |
---|---|
医師の診断を受けて処方される医薬品を使う | 専門的な診断とモニタリングのもとで使用することが安全 |
日本で承認された医薬品のみを使用する | 厚労省が認可した薬品は、効果・安全性が確認済み |
インターネット通販は正規販売ルートを利用する | 登録販売業者から購入すること(※医薬品ネット販売ガイドラインに準拠) |
そもそも「個人輸入」は違法なのか?
▸ 自分の使用目的であれば“原則として違法ではない”
厚労省は、「自己使用に限って」個人輸入を認めている立場ですが、以下の制限が付いています:
- 医薬品は原則2か月分まで
- 販売・譲渡・第三者使用は完全に違法
- 麻薬・向精神薬・劇薬など一部の薬は輸入禁止
- 注射剤・未承認ホルモン剤なども制限対象
注意:規制対象かどうかの判断は難しいため、事前に地方厚生局などに確認を推奨
まとめ:厚労省の「反対」には明確な理由がある
厚労省が個人輸入に慎重な姿勢を取るのは、「安易な自己判断が命を危険に晒す」からです。
**医薬品の本質は「命に関わるもの」**であり、価格や利便性だけで選ぶべきものではありません。
公式見解や注意喚起をよく読み、健康と命を守るための正しい選択を心がけましょう。